金蘭千里50式

2018.01.01

金蘭千里学園50周年特設サイト

金蘭千里中学校・高等学校が2015年の50周年を記念して制作した、リレーブログ形式のコラム集です。一年にわたり、様々な視点からのコンテンツを50個ずつ発信して、金蘭千里の50周年時の姿を描き出しました。

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『絶叫委員会』 穂村弘

zekkyo

穂村弘がもう、50歳を超えている。
歌集『シンジケート』が世に出たときはまだ彼は20代。
日常的な口語での表現に挑戦する「ニューウェーブ短歌」の旗手だった。
ホンネのところでは、歌集を取り上げたいところだが、
引用のルールに気を遣う場で歌集の紹介は難しい。
泣く泣くエッセイをご紹介することにする。
(エッセイのほうが売れスジのようですが)

『絶叫委員会』は、口語にこだわった穂村らしく、
町で耳にした「ふつうの人の気になる言葉」を扱っている。
ラジオ番組に寄せられた投稿の一節。
口さがない中年女性の噂話。
意地悪な得意先に向かって思わず怒鳴ってしまったサラリーマン。

人間の狂気というのは、日常の中に忽然と立ち上がる。
穂村の歌では、狂気を受信するアンテナが
いつも静かに脈を打っている。
同じ感受性ですくい取られた「気になる言葉」たちの
エピソードは、やはり読み手を、伏し目がちな笑いに引き込む。

今年度は、本校も穂村さんと縁があった。
産経新聞主催の「与謝野晶子短歌賞」で、
本校生の作った短歌が穂村さんのお目にとまって、
直に表彰状をいただく光栄に浴したのだ。

並べてたおはじき君が混ぜていくほらこの方がなんか落ち着く 谷口真結香

整然と並んでいたおはじきの並びを
わざと乱すところに落ち着きを見出だす「君」。
一見転倒した価値観が広がる世界への扉を開いてくれた相手に
眩しさを感じているような気配のある一首だ。

表彰式で谷口さんを讃える穂村さんの声はどこか甘ったるくて眠そうだったが、
しかし歌に潜む方法を取り出す言葉の一つひとつは研ぎ澄まされていた。

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