理科教諭、科学部顧問 竹尾 真
幼い頃から、科学者(お茶の水博士のような)にあこがれていた。
特に化学に興味を持ち始めたのは、高校2年のときである。単純に実験がおもしろかった。
当時どんな実験をやったかは、余り覚えていないが、『アニリンの合成実験』は鮮明に覚えている。苦労してできたアニリンが赤色(教科書では無色または褐色)をしていた。私にはその赤色の物質が、まるでルビーのように思えた。その後、アニリンブラックという黒色の染料に変化することにも驚いた。目に見えない原子の世界で一体何が起こっているのか?それを想像するのが『化学』だと思った。
実験が終われば、当然実験レポートの提出が義務づけられていた。私は、図書館でいろいろな専門書を調べた。当時は、今のように簡単にインターネット検索することなど出来なかった。苦労して提出したレポートを、担当の先生が丁寧に見てくださった。次のレポートも頑張って書こうと思った。
教師になってから、ある進学校の理科の先生が、こんなことをおっしゃっていた。
『高校の実験は、結果がわかっているので、やる意味がない。それより問題演習をやった方が生徒のためであると。』果たしてそうであろうか。私が悩んでいたとき、それを吹っ切ってくれたのは、勤務先の高校での、I先生との出会いであった。教科書に載っている実験をすべてやってみようや! 結果は教科書に書いてあるとおりである。(それが実は凄いことなのだ!)いや、結果が教科書通りでないと困る。しかし、実験というものはそんなに甘くない。まず、準備が大変である。結果が予想と違う。班によってまちまちな結果がでる。さらに、器用な生徒もいれば、怪我をする生徒も・・・ それを乗り越えて余りある成果があるはずだ。
いま、化学実験に興味を覚えて、科学者への道をめざす生徒が一人でも多く現れることを望んでいる。