『植物はすごい』 田中修
梅雨の時期に色とりどりの花を咲かせ、われわれの目を楽しませてくれるアジザイ。実は葉っぱに毒がある。しかも青酸系の恐ろしい毒である。飲食店で、料理に添えて出されたアジサイの葉っぱが原因で食中毒事件が起きたこともあるという。しかし、アジサイからすれば、この毒のおかげで虫に食べられずに生きることができる。植物が持つ「匂い」、果実の「味」、花の「色」に至るまですべてが、自身の生き残りや子孫を残す営みにつながっている。植物のしくみと工夫は実にすごい。
秋の深まりを感じさせるヒガンバナ。球根で増えるが、その球根に毒がある。人々がこの花を墓地に植えたのは、その毒で遺体をモグラやネズミから守るためだった。また、球根にはデンプンが多く含まれ、水にさらして毒抜きをすれば、人々の空腹を満たす「救荒作物」としても役立つそうである。まさしく人間と植物の共存・共栄の典型例である。
この本では身近に見られる植物を取り上げ、生きるためのしくみの巧みさや逆境に耐えるための努力など、植物の本当のすごさが紹介されている。難しい化学反応式や数式は一切なし。つい数ヶ月前に入手した本であるが、ひたすら文系の道を歩んできた私でもよく理解できた。改めて自然のすばらしさに感動した本でもある。若い頃に出会っていたら、人生が変わっていたかもしれない。
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