小学生の頃、大叔母をたずねて時々、着物姿のおばあさんが、訪ねて来られているのに気づいていました。親戚でもなく、お友だちでもなく、だけど大叔母の話しぶりから大切な方だということは、小さい私にもわかったのです。お部屋から聞いたことのない不思議な音が聴こえてきます。「あれ何の音?」と母に尋ねました。「お三味線。おっしょさん(御師匠さん)が来られてるよ。」おっしょさん!!なんと魅力的なひびき!大人の世界やと、どきどきしました。「私も習いたい」と言ったのでしょうか、もう今は思い出せませんが、それが私の琴と三弦の始まりです。
ご縁があって「春の海」の宮城道雄先生の代稽古をされていた先生に教わる事になりました。小学生でしたので、遊び半分のお稽古でした。師匠には、わが子以上に可愛がっていただき、芸だけでなく、しきたりや作法をたくさん教わりました。休日にある演奏会のお供は、もちろん嫌だったけれど、少しは忍耐が身についたでしょうか。感謝してもしきれません。お稽古は休まず通いましたが、練習をしていかないので、もったいないと、いつも呆れられていました。
社会人になり、急に自由時間がほしくなりお稽古を中断させてもらいました。今から思えば、時間なんて自分で作ればあったのに・・・その師匠も亡くなり、ふと30年も置きっぱなしになっていた楽器をみて、もう一度やり直してみたくなりました。そして今、また素敵なおっしょさんにめぐり会えた事もあり、60の手習いではないけれど、「和の心を究める」に挑戦中です。