『中島らもの特選明るい悩み相談室 その1~3』 中島らも
今から10年前まで、日本には中島らもというおかしな人気作家がいました。
これは、彼が長年に渡り連載した朝日新聞の悩み相談をまとめた名著です。
「毎朝、上の階のおばさんがシコを踏んでうるさい」
「記憶術の本を買ったことを忘れてしまう」
「来世はミジンコになりたいと願う息子が残念」
読者から寄せられる奇問珍問とすっとぼけた名回答、それはまるで読者と作者の知的格闘技のようです。中島らもは「尼崎の神童」と呼ばれながら見事に道を外れ、アウトローな人生を送った異能の作家でした。そんな彼の文章には、完璧でない全ての人間への温かい眼差しがあります。「文語体で話す父親に疲れる」「たい焼きの正しい食べ方が分からない」など、けったいな苦悩を抱える子羊たちに寄り添い、最後には悩みをきっちり笑いに昇華する。誰の中にもあるヘンテコな部分を「ま、いいか」と思わせるぬくもりがあるのです。
実はこの新聞連載中に、ある騒動が起きました。
「祖母から『じゃがいもを焼いて味噌をつけて食べると死ぬ』と聞いたが、本当?」という問いに対し、著者が「本当です。焼きじゃがいもに味噌をつけて食べると人は確実に死にます。ただし何十年後に死ぬかは個人差があります。100年後かも」と回答したところ、焼きじゃがいもに味噌をつけて食べた覚えがある読者からの切実なお問い合わせが新聞社に殺到したのでした。この本を読むと、そんな人々の生真面目さもまた愛おしく思えてくるのです。
そういえば、ある進学校に通う高校生からの質問で
「生徒全員でクーデターを起こして零点を取ったら、赤点制度はなくなるのか?」
というものもありましたが…答えは本書で確認してください。
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