金蘭千里50式

金蘭千里学園50周年特設サイト

「金蘭50式」は、50周年を迎える金蘭千里中学校・高等学校の「今」をお伝えする特設サイトです。一年にわたり、様々な視点からのコンテンツを50個ずつ発信して、金蘭千里の姿を描き出します。

活躍50色

木村史明さん  (11期、橿原市昆虫館)

kimura

皆さんは生きた昆虫に素手で触れることが出来ますか? 昨年、虫に触れない高校生が6割に達し、25年前の3割から倍増したとの報道が話題になりました。

私は幼少のころより、様々な生き物に接して育ちました。家は新興住宅街にありましたが、近くに緑豊かな寺やため池があり、小さな生き物に出会う機会に恵まれていたのです。中でも昆虫に興味があった私は、今では全く見られなくなりましたが、当時は少なからずいた、夏休みに網を持って一日中セミ採りに興ずる昆虫少年の一人でした。

そんな私は中学3年から金蘭千里でお世話になったのですが(おそらく金蘭千里の歴史50年の中でもこの年だけだと思いますが、中学3年生一クラスだけの新規募集がありました)、その夏にその後の人生に大きな影響を与える貴重な体験をさせていただくことになります。

それは夏休みに有志の先生方により参加者を募って行われた、現在の伊那市戸台での合宿です。初めての山小屋宿泊や、仙丈岳や甲斐駒ケ岳への登山など40年を経た今でも鮮明に記憶に残っているのですが、この合宿の企画者のお一人が故中川恭行先生でした。中川先生は数学の先生でしたが、関西では名の知られた甲虫の専門家でもあり、中でもカミキリムシ科にたいへん造詣が深い先生でした。合宿中、この中川先生に専門的な昆虫の採集の仕方から科学的な昆虫標本の作成方法まで細かく御指導いただき、また、これまで身の回りで見てきた種類と全く異なる昆虫たちと出会い、すっかり昆虫のとりこになりました。

そして、このころより将来昆虫に関わる仕事に就きたいと漠然と意識するようになります。

勉強が不得手だった私ですからすんなりというわけにはいきませんでしたが、何とか昆虫学研究室のある大学に潜り込むことができ、昆虫三昧の学生生活を送ることになります。在学中は、毎年のように、1~2ヶ月間の台湾での昆虫調査を行う機会にも恵まれました。

放蝶温室 外観橿原市昆虫館外観

就職するとすぐに新しく建てる昆虫館の設計に携わります。当時、西日本には標本展示を中心とした昆虫館や博物館はあっても、生きた蝶を展示するような施設はありませんでした。そこで、自由に蝶が飛び交う空間の中に入ってもらい、目の前で蝶の行動が観察できる「パススルー式」の放蝶温室を目玉に据えた橿原市昆虫館を平成元年にオープンさせました。その後、伊丹市や広島市、箕面公園などに同様の放蝶温室を持った昆虫館が造られますが、橿原市昆虫館は西日本でその先駆けとなりました。

子供たちの理科離れが言われて久しいですが、昆虫を通しての自然科学や環境学への興味付け、動機付けをその活動の柱とする橿原市昆虫館は、今年25周年を迎えました。

その間、昆虫館に対するニーズも変化していきます。地方自治体レベルでの生物多様性地域戦略策定が求められるようになる中、その基盤施設としての役割も担っていくことになりますし、環境省の行っている、絶滅の危機に瀕する昆虫の生息域外保全事業にも携わるようになっています。

このように、たいへん幸運なことに、私はこの金蘭千里時代に抱いた夢のとおり、昆虫に関わる仕事に携わってきましたが、冒頭の大阪での報道を見ても、まだまだ力不足を痛感しているのが現状です。

橿原市昆虫館 エントランス

最後になりましたが、金蘭千里創立50周年、本当におめでとうございます。

生徒の皆さんは日々の勉学にたいへんでしょうが、ぜひ金蘭千里在校中に多くの本を読み、積極的にいろんな体験をして、将来の夢への糸口を探していただければと思います。