金蘭千里50式

金蘭千里学園50周年特設サイト

「金蘭50式」は、50周年を迎える金蘭千里中学校・高等学校の「今」をお伝えする特設サイトです。一年にわたり、様々な視点からのコンテンツを50個ずつ発信して、金蘭千里の姿を描き出します。

活躍50色

西田光男さん  (3期、鍛鉄工芸家)

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ガッツン!

一瞬何が起こったか分かりませんでしたが、状況は直ぐに理解できました。

数学の授業に集中し(?)、つい眠りに入った私の頭に黒板用コンパスの一撃でした。担任でもあった肥塚先生には特に可愛がられた一人で、50年近く経った今でもあの愛の鞭は鮮明に覚えていますし、大好きでもあった数学が作品のデザインなどで大いに役立ち感謝しています。

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私の職業は赤く熱した鉄を叩いて作品を制作する『鍛鉄工芸家』です。

ヨーロッパに旅行した人なら、鉄で細工された、扉や窓の格子、看板、手摺など目にされた事があると思います。これらの多くは溶接をしないで組み上げられています。日本の寺社などを釘を使わず、木組み・継手と組手だけで建てる宮大工の技術に通じるところがあり、アールヌーボー、アールデコの時代に技術とデザインの多様性が進みました。

私がこの道を志した頃、日本ではその技術を教える学校はおろか、それを職業にする人もほとんどいませんでした。美術大学を卒業後、主にドイツやアメリカで出版された専門書に表記されていた英語を訳し、試行錯誤しながらの独学でした。

ヨーロッパのデザインに囚われない独自のデザインを追求しながら、門扉やフェンス、モニュメントなどの依頼を受け制作していましたが、大きな作品や仕事の注文も増えて行く中で一人でやっている事に限界を感じ始めていた38歳の夏、ヨーロッパとりわけドイツとスイスの鍛鉄工房を回る旅をしました。その中の一つ『マンフィールド・ブレドール』さんの工房には、将来の独立を目指し技術を学ぶ、さまざまな国の若者が働いていました。それを目の当たりにし、自ら抱いていた、若い人を育て、この日本で『鍛鉄』を誰もが知る職業に押し上げたいという夢が更に膨らんで行きました。

『自分には出来る!』

旅立つ前には、自分には人を育てる技量があるのか?そんな疑心暗鬼を払拭できたのもこの旅でした。

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1992年、埼玉県秩父市の工業団地の一角1600坪の土地に工房が完成し、今も全国から集まった6名の若者と制作活動に励んでいます。これまで工房から巣だった内の11名は海外も含め自らの工房を構え仕事をしています。

東西の壁が崩壊して以降、技術交流を目的とした鍛鉄イベントがヨーロッパ各国で開催されており、ほぼ毎年講演依頼を受け、さまざまな国に行っています。アジアの最も東の国で、伝統に囚われない斬新なデザインを実践している事がその要因と思われます。私自身も参加する事により新しい技術やデザインを学び、更に成長したいと考えています。

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直径が600mm丁度で幅が50~60mmの輪(厚さの指定なし)で、
あとはそれぞれの作家の自由。
私は常に風の方向に向かうリスをアレンジしました。

2年前、とても嬉しい事がありました。

ノルウエー・オスロ郊外の公園に設置する、世界11カ国14名の鍛鉄工芸家による共同モニュメント(リング・世界の輪を意味する)の制作者の一人として選ばれたのです。そしてメンバーの中にアメリカ代表としてアルベルトペリーさんの名前を見つけました。若い時に教本としていた洋書の1冊に彼が大きく紹介され、鉄とは思えない温かなラインで私の心を魅了していました。そのあこがれの人の作品と肩を並べて立っているのです。

2015年にはノルウエーに行き、是非そのリングの中に立ちたいと思っています。

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