金蘭千里50式

金蘭千里学園50周年特設サイト

「金蘭50式」は、50周年を迎える金蘭千里中学校・高等学校の「今」をお伝えする特設サイトです。一年にわたり、様々な視点からのコンテンツを50個ずつ発信して、金蘭千里の姿を描き出します。

活躍50色

長尾 大道さん
(24期、東京大学地震研究所 准教授)

この度は、金蘭千里中学校・高等学校が創立50周年をお迎えになられたとのことで、誠におめでとうございます。心よりお慶び申し上げるとともに、わが母校が栄えある歴史を着実に積み重ねておられることに、卒業生の一人として大きな誇りを感じております。

私は24期生として卒業後、自然科学の研究者となることを志して京都大学理学部に入学し、京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻で博士(理学)の学位を取得しました。そして、核燃料サイクル開発機構(現: 日本原子力研究開発機構、岐阜県瑞浪市)で研究者生活を本格的にスタートさせ、海洋研究開発機構(神奈川県横浜市)、統計数理研究所(東京都立川市)を経て、2013年9月より現職の東京大学地震研究所に着任しました。

首都直下地震防災・減災プロジェクト

東大地震研では、地震や火山に関する多種多様な研究が実施されていますが、私は2011年の東日本大震災を契機に発足した巨大地震津波災害予測研究センターに所属し、そう遠くない将来に発生することが予測されている南海トラフ地震や首都直下地震といった巨大地震からの防災・減災に資する数理科学的手法の開発研究を行っています。

現在の科学では、「いつ、どこで、大地震が起こるか」を予知することは不可能だと言われていますが、近年の地球観測技術の発達により、地震を引き起こす地下の応力分布をおおよそ推定することは、実は可能になってきています。私は、現代の気象予報を支える計算基盤技術である「データ同化」を地震研究に応用することにより、「何年以内に、どこで、どれくらいの規模の地震が起こる確率は何パーセントか」を予測する「地象予報」の確立を目指し、日々の研究に取り組んでいます。

また同時に、東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻において大学院教育にも従事し、地震研究を支える数理科学についての講義や研究指導を行っています。次に発生する巨大地震では、少しでも多くの人命や財産を災害から守りたいという強い思いが、私の研究や教育への情熱を支えています。

大学院を含めると研究生活は20年近くになりますが、振り返ってみれば、私の研究者としての原点は、金蘭千里在学時にあると思っています。中学2~3年生の時にNHKで放映されたシリーズ番組「地球大紀行」に強烈な印象を受けて、自然科学の研究者になることを夢見るようになり、それまでは今ひとつの成績だった理数系科目の勉強に、本腰を入れるようになったことを記憶しています。特に、数学、物理、地学については、学校で習う範囲を大きく越えて勉強し、これらの科目のテストで失点すると、相当に悔しい気持ちになったものです。

現在、研究職を取り巻く環境は非常に厳しく、博士号を取得しても研究者として生き残れる人はごく一握りという状況です。私も将来への不安から研究の道を諦めようかと思ったことも数知れずありましたが、それを思いとどまらせたのは家族や周囲の方々の理解とサポートであり、また何と言っても若かりし頃の熱い志でした。金蘭千里で過ごした6年間は、自身の人生を決定づける極めて貴重な時間だったと言っても過言ではありません。

もし金蘭千里で学んでいる生徒の皆さんにアドバイスするとすれば、なるべく早いうちに自分が将来何をしたいかという方向性を見定めた上で、それを実現するためには今、何を学び、何をすれば良いかを具体的に考え、そしてそれを積極的に実行してほしいと思います。大きな夢や目標を持つことは極めて大切で、目的意識さえあれば、日々の勉強や試験も苦痛ではなくなるものです。

また、もし皆さんの中で研究者を目指す人がおられるようでしたら、今の勉強はどれも大切にして下さい。国際学会での発表や論文を執筆する際には英語は避けて通れませんし、研究予算を獲得するための提案書を書く際には国語力や図面を作成する美術的センスも必要になります。また、長期間にわたる地道な研究生活を支える体力や、他の研究者や職場の仲間とのコミュニケーション能力も重要です。おそらく他の職種でも同じだと思いますが、結局は総合力が試されることになります。こういった様々なスキルを若い時にどれだけ身に着けたかが、大人になってから差となって如実に現れてくるもので、私もプロの研究者となった今になって、金蘭千里在学時に理数系に偏らず、もっと幅広く勉強すれば良かったと痛感しています。

金蘭千里という恵まれた勉学環境で、優秀な仲間と切磋琢磨されている時間は、皆さんの人生において何物にも代えがたい糧となります。ぜひ、「今」を大切にして大きく成長して頂き、いずれ我が国を支える人材として世界でご活躍される皆さんのお姿を拝見することを、心より楽しみにしております。